「何も期待しないで見たら面白い面白い」
「どこが面白い?」
「女警官と主犯は敵対していたはずなのに、いつの間にか2人とも同じ場所に立っているのが面白い」
「細かい描写にはいろいろ無理があるんじゃない?」
「そうだね。無理がある。いろいろとね。でも、このストーリーを成立させるには止むを得ないところもある」
「物語に奉仕するためなら無理は許されるってことだね」
「そうだ。物語として筋が通っていればそれでいい」
「他に何か言うことは?」
「おそらく新宿副都心だろうと思われる場所が写ったが、逃走に使われた川はどこなんだろうね」
「そこが気になるのかい」
「ちゃんと川に合流する暗渠、おそらく下水管が出てきて活用されるとか。いろいろ面白かった」
「他には?」
「自分1人が死んで、仲間を殺さないように誘導する知能犯の主犯が憎いね。罪も全部1人でかぶって。しかも、その思いは女警官が受け継ぐ」
「犯罪者と警官が仲間になっていいのか?」
「カリ城的なパターンはある意味で安直すぎるのだがね。この場合は、死んだ男の意志を受け継ぐ形なので、それはそれで良い。実際には気持ちから気持ちへの連鎖はこの2人にしか受け継がれない。そういう物語になっている」
「そこが特に良く出来ている訳だね」
「良く出来ているといえば、最初犯人側に正義があるように見せてからそれに疑問を差し挟むという物語の組み立ても良く出来ている。この話、犯人側に思い入れて見て良いのか、それとも警察側に思い入れて見て良いのか最後まで分からない」
「でも主犯と女警官の気持ちが最後に一致して、どちらを応援しようとも関係が無くなるわけだね?」
「そこは構成が上手いところだ。落とすべきところにきちんと落ちて話が終わる」